季節外れとは言わないで 判ってる。
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「アリオンさんほんとはおれのことキライじゃないんですか」
ジョカが一息で言い切ったそんな言葉に、アリオーシュは背筋にひゅっと冷たいものが入ってくる気がした。いつものように巻いてやっている譜帯をつまむ指先が静止する。
「アリオンさんはいつもおれのこと気にしてくれるけど、
おれはみんなとはちがうし、
おれはアリオンさんのお父さんの」
「…ジョーカ」
口の中でぐるぐる渦巻いた重いものを飲み込んで、アリオーシュは空いた左手でジョカの額をぴん、と小突いた。
それまでガラス球のような目をしていたジョカは、ふるりと震えてうつむいた顔を上げる。
「いいか、ジョカ。
俺の父親は29年前にフェレス島で死んだ。
で、お前は13年前に生まれた。
よってレクエラート、とジョカ、お前は別人」
「でも」
「でもじゃねえ。
それに俺、お前のことはスキだぜ?兄貴面できるし、世話しがいがあるし」
自分の中の異物も、ジョカの中の異物も、何もかも取り払うように笑ってみせれば、ジョカはとすんとアリオーシュの肩にもたれ掛かる。
そのまま譜帯を巻きかけの両腕をアリオーシュの背中に回して、母親譲りの太陽のような笑みを浮かべれば、それはいつものジョカだった。
「あーもうアリオンさんスキ!嫁に来てよ!」
「おっと悪いな既婚者だ」
「うわーん!」
彼の母親はきっと知らない、彼のあんな顔を知らない。彼は母親の前では「ジョカフェリテ」以外の何者でもない。
「…アリオーシュ」
顔を埋めたまま呟いたジョカ、オリジナルと同じその声に、アリオーシュは身を震わせた。
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