季節外れとは言わないで 判ってる。
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冬のホドは美しかった。
春のホドも、夏の秋のホドも美しかったが、妙に冬のそれを覚えているのは、連綿と連なる煌びやかな譜業灯や大理石の床石の上で開かれる露店や、また父や母、その騎士たちからもらえる色とりどりのプレゼントが、当時のガイラルディアをたまらなく惹きつけたのだろう。ホドはユリアの生誕地で、冬はユリアの生誕の季節だ。だから、特別ホドの聖誕祭は輝いていたのだろうと思う。
いくつめの冬だったか、もうおぼろげにしか浮かばない、…それが堪らなく申し訳なくなる、父の顔があった。本土から帰還した父を、姉と迎えに行った。白い息を闇空に浮かせながら、雪に覆われた白亜の大理石を踏みながら。船上の父の姿を見て、走り出した、のだと思う。姉の声が後ろから追いかけた。「ガイ、 待ちなさい 父上は ほら」姉はなんと言っただろう。幼いガイラルディアは船と島との間に掛けられた橋をととんと駆け上がって、上がって、そして父がそこにいた。父は困ったように笑った。それが父の笑い方だった。
「ガイラルディアみてごらん」
父はガイラルディアを抱え上げた。息子をその手に抱いて、父は彼の島を眺めた。冬のホド。きらきらと輝くホド。夢のようだった。夢のような光景だった。ガイラルディアは、漠然と、じぶんはこの島で生きてこの島で死んでいくのだなあと思った。それはとても、しあわせなことだった。
「これが君の島だ」
父はぎゅうと息子を抱く腕のちからを強めた。船の下から姉が手をおおきく振っていた。
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